「息をするようにアポをとってくる」、そんな評判の立つ新人・杉本和。「電話をかけ続ける」という単調なイメージが先行しがちなインサイドセールスに変革をもたらし、独自のセミナー企画からSNSでの販路開拓まで、新たな企てによって次々に成果を出している。柔軟な発想、フットワークの軽さ、PDCAを回す速さ。彼女を動かすエネルギーはどこから湧いてくるのか?質問を投げてみると、「私の動機は悔しさです」と話し始めた。
面談で大号泣。
この悔しさを、どれだけ強いバネにできるか?
入社1年目の12月。長い研修期間を終えて配属が発表された後、私は上司との面談で大泣きしていました。なぜインサイドセールス配属になったのか?私はお客様と面談がしたかったのに!
当時、私の中では「営業といえばフィールドセールス」「面談して、契約をして、支援してこそ営業だ」という勝手なイメージがありました。一方、インサイドセールスはそもそも何をしているのか全然知らず、「電話をかけている部隊?」、そのくらいの知識でした。仮に電話をかけるだけなら、どんなふうに成長できるか、イメージがちっとも湧かない。成長ができなければ、自己肯定感を持ちづらいし、自分のことも好きになれない……私の心は焦りで爆発しそうでした。憧れの「ザ・セールスパーソン・オブ・ザ・イヤー」で壇上に出てくるのも、やはりフィールドセールスの先輩たちです。「インサイドセールスであそこに立つイメージが湧きません」と落ち込む私に、しかし上司は一言、「じゃあ杉本が成し遂げればいいのでは?」。……それは初めて、「いいかも」と思えた未来像でした。この猛烈な悔しさをバネにすれば、むしろ他で類を見ない高みまで行けるのでは?自分の成長そのものを、企てればいいのでは?そうと決めたら、言い訳している暇はない。泣き顔を上げました。
「相手の時間を奪うのだ。
何か一つでも与えてきなさい」
インサイドセールスでは、商品の資料をダウンロードされた方や少しでも興味のありそうな方に順番にお電話をかけ、面談のアポイントを取っていきます。最初の頃は断られることも多く、正直、成果に貪欲な分だけ消耗もしました。
そこに変化が起きたのは、当社の代表に「アポイントが取れたかだけを成果の指標にしてはいけない。マイルストーンを置く必要がある。少なくとも電話で相手の時間を奪っている以上、最低限、相手の状況をお聞きし、聞かせてくれたのなら相手にとって価値ある情報提供をしないと」と言われたことでした。以来、「アポイント」以上に「価値提供」に意識を向けるようになった私は、ある日一人のお客様とつながります。

その方は最初、RPAなんてどれも同じだから安い方がいいと思われていました。しかし私との話の中で「RPAで何がしたいか、どんな社員が使う想定か、どのレベルの効果を求めるかによって最適なRPAは変わる」ということに気づかれ、「そうか。だったら全部話を聞いて決めたほうがいいね。ありがとう!」と晴れやかに一歩進んでくださったのです。
これこそがインサイドセールスの存在価値なんだ。そんな実感が湧き上がりました。電話は、最初の1分で価値がないと思われればすぐに切られてしまう厳しい世界。ただ、自分がかけた一本の電話で大きくその人の価値観を変えることもあるし、インサイドの電話がなければ、私たちの商品とお客様が出会うことはないのです。そう考えると、まさに「誰かにとってのきっかけを作り出すプロ集団なのだ」と、日々の仕事に明確に手応えが出てきたんです。
私の仕事は、「電話をかける」ことじゃない。
アポイントの価値を最大化すること。
電話はあくまで手段。アポイントの価値を最大化するというインサイドセールスの目的に立ち返り、できることはなんだって挑戦したい。マーケティンググループからリード*を渡されるのを待つだけでなく、自分でリードを生み出したい。アポイントにつなげた後の契約率を上げたい。
圧倒的な「貢献と成長」を望む上で、私は次第にこうした思いに突き動かされるようになりました。それが私の個々の「企て」の核となっていきます。
* お客様からの問い合わせなど、マーケティング施策によって創出されたお客様との接点のことで、架電先リストの形でインサイドセールスに渡される。
まず私はセミナーを企画し、講師役から参加者へのその後の架電まで自分が一貫して務めることにしました。インサイドセールスの人間が独自でセミナーを企画した前例はなく、コンテンツもゼロから制作。そしてせっかくだからマーケティング部主催のセミナーとの違いを出そうと、テーマには「RPAの使い方は?」といった広いものを避け、「スカウティング業務の自動化はできるか?」など特定の人に深く刺さるものを意識して立ててみました。すると非常に関心の高い方々が集まってくださり、その後のアポイントや契約にも高確率で結びつくようになったんです。
他にもSNSでの発信を始め、DM経由でのお問合せからアポイントを取ったり、リードの優先順位やお電話のタイミングをチームで見直すことでアポ率を向上させられたりしたこともありました。「仕事は何をするかじゃない。どう向き合うかだ」と以前言われたことがありましたが、ここまで自分で走ってみて、やっと本当に理解できました。本気で仕事に取り組めば、職種からも手段からもどんどん自由になれるんです。

世界は、自分を好きになれる可能性であふれている。
2年目の11月、その瞬間は訪れました。念願の「ザ・セールスパーソン・オブ・ザ・イヤー」で私の名が呼ばれたのです。壇上から、私以上に喜んでくれる上司を見つけて、込み上げるものがありました。
弊社のインサイドセールスはまだまだ発展途上です。「これだけやればOK」そんな型はありません。だからこそ、いろいろな挑戦をさせてもらえて、可能性は無限大。その楽しさを日々実感しています。今ではインサイドセールスという仕事が、そしてこんなふうに頑張れている自分が、私は好きです。
ここまでのお話は、配属からたったの一年。すごい密度でした。今は後輩が増えてくる中で、誰が電話をしても同じ水準を保てるよう、自分の気づきやノウハウをシェアすることにも注力しています。また、今アポイントにつなげても成約しそうにないお客様を、インサイドセールス内で温めてからフィールドセールスに渡していく仕組みづくりも考えているところです。FCE=集合天才、成果は全員で出していくもの。その先に、お客様も私たちも、もっと自分のことを好きになれる世界が広がっていくことを夢見て、企てを続けたいと思っています。