その「企て」は、配属前から始まっていた。「僕は学生インターン生を募集し、FCEとして初めて組織化します。そしてそれを採用とセールスの両面の成果につなげます」。1年目、桑田慎仁による宣言。トレーニング・カンパニーへの配属が決まると彼は即座に行動を開始し、5人のインターンチームを組成した。自分自身も新人の身で、仕事を覚えながら、育てる。敢えてハードな道を選ぶ桑田はどんな未来を見ようとしているのか。その視座を紐解く。
企画・制作・実行、すべて自分。
「僕、インターンチームを組成したいんですよね」という話は、最初、上長にしたんです。返事は「いいね、私もやりたい!」(笑)。FCEって基本そういう人ばかり。「やるな」「まだ早くない?」なんて聞いたことがないし、「やっていいけど、勝手にどうぞ」ってわけでもない。言い出しっぺが一番必死にやるのは当然として、その勢いを阻害せずに、支えてくれる社風があるんです。
トレーニング・カンパニーに配属されたタイミングで、「じゃ、今からもうどんどんやっていいよ」と言ってもらい、自分の業務である「Smart
Boardingのインサイドセールス」の中でインターン生を立ち上げることにしました。初年度から今までに来てくれた学生は、内定者2名を含む7名。実際に営業の電話をかける業務についてもらうので、お客様の前に出せるまで最低1ヶ月は研修を行う。人によって、長ければ3ヶ月でもとことん教える。教育フローもコンテンツも、ゼロから考えました。

インターンは、自分の可能性を切り拓くきっかけだった。
なぜ、そこまでしてインターンの組成をしたかったのかというと、僕自身が学生時代、3年半にわたってインターンに入り、そこで自分の可能性を一気に広げられた経験があるからです。もともと人とコミュニケーションをとるのが苦手なタイプで、何かを売るとか、プレゼンするとか、想像もできなかった。「このまま社会人になるのはマズい」と飛び込んだインターンが、たまたまインサイドセールスを行う会社だったんです。3年半、無我夢中で目標を立てては達成をし、最後の方は学生たちをまとめる役割もしていました。卒業前、鏡の前にはまるで変わった自分がいた。これはすごい。
この経験を、次は自分が提供する側になりたい。それが「企て」の原点です。
実はFCEにとってもインサイドセールスに就く人を中途入社で採るのは難しく、新卒頼みなところがあって。であれば、学生でインサイドセールスのスキルを持った人を育て、採用につなげられたらメリットは大きい。インターン生を通じて学生の間にFCEの認知度を向上させられることにもつながる。やる意義は明確でした。
追い詰められた時に、一人なのか。仲間がいるのか。
問題は、自分にそれを切り盛りできるか。メインの仕事はあくまでもインサイドセールスなので、インターンの育成の傍らで営業としての目標達成はマスト。自分でやり始めた以上言い訳はしたくないし、毎月毎月苦しんでは目標を達成してホッとするのを繰り返す。でも追い詰められるからこそ、架電で話す内容の質を上げる努力をしたり、毎週上司と振り返りの時間を持って次の一手を一緒に考えたりと、限られた時間で成果を上げるために頭を使うようになってくるんですよね。

何より自分が変わったのは、他の人に仕事をパスできるようになったこと。一度、よほど僕がひどい顔をしていたのか、上司に「抱え込むくらいなら投げ出していいんだよ!」と言われたことがあります。そのあたりから、たとえばインターン生との一日二回の面談や、ロープレを少し分担してもらえないかと先輩に依頼ができるようになりました。頼んでみると、みなさんすごく快く引き受けてくれるので救われています。FCEが新しい「企て」を次々に生み出せる裏には、こういう「一歩踏み出した人を孤独にさせない」文化があるんだと思います。
高い目標を立てて、もがくからこそ、シナジーは生まれる。
インターンの組成が会社に利益をもたらしたかと問われると、僕は「今はまだわからない」と答えます。インターンがなければ僕自身の架電数はもっと増えていたでしょうし、有償インターンだから出費もある。周りの人にも負担をかけている。現時点ではもしかしたらマイナスかもしれません。
でも、目の前のインターン生はぐいぐいと育っています。最初は受け身だった学生が、「ここで行き詰まってるんで、レビュー*してください!」と自分から駆け込んでくると、お!と思うんです。FCEのパーパスである、「チャレンジあふれる未来をつくる」を目の当たりにする感覚。それに架電数についてはインターン生が僕の分身だと思えば合算で増えていますし、Smart Boardingをインターン生の教育に活用しているので、それが自社の活用事例となり、同じようにインターンで使いたいというお客様との契約に結びつきました。
* FCEの文化の一つで、上司への相談を指す。自らの考えや提案を上司に聞いてもらい、フィードバックをもらう機会。

最近はFCE内の他部署でもインターンを組成したいという声があって、僕のつくった教育フローやコンテンツをそのまま共有することでシナジーが生まれています。自分一人の、短期的な成果だけを追っていたら、こんな未来は来なかった。広く長く見ることで、成果は無限に広がっていく。未来が生きやすくなるんです。
今の日本には、マネジメントできる人材が不足していると言われています。人を育てられる人や、育てるためのノウハウにはこれからまだまだ需要がある。インターンの組織化で、FCEに「若い人を育てるノウハウ」が今まで以上に蓄積されるのであれば、そこには数値で表れる以上の価値があるのではないかと個人的には思っています。でも正直、そういう大義を語る以上に、僕自身がただただインターン生を育てたいんです。「成長に貢献したい」「喜んでもらいたい」と思える誰かがいればいるほど、僕は頑張れるんでしょうね。